BIRD 50
パーカー没後 50周年記念イベント
Bird 2005 開催決定!!
みなさん!!!少しご無沙汰していました。年も押し詰まりましたが、 みなさまもお元気ですか?
さて、我々「日本チャーリー・パーカー協会」としては、 来年3月がいよいよチャーリー・パーカー没後50周年となり、 それを記念するイベントを企画してきました。
その日時がやっと昨日決定しましたので、お知らせします。
" Bird 2005 " Bird Lives 50!
2005年3月13日(日)午後6時〜10時30分
場所: SOMEDAY 東京・新橋
現在内容を詰めているところですが、沢田一範氏(As)を中心 として"Parker with Strings" を再現することになりました。
その他、内容を充実した著名人のトークセッション、多数の パーカー派アルトサックス・プレイヤーのゲスト参加も予定し ています。もちろん、飛び入りジャムセッションも会の最後に 行います。
また、この会ならではの「パーカー未発表録音」をお聴かせ する企画も進んでいます。ご期待ください!!
それから、今回日本チャーリー・パーカー協会のサイトも
新たに立ち上げました。順次、この企画の内容をここへ発表し
て行くつもりです。↓
↓
http://parkerjp.com/
では、とりあえず2005年3月13日(日)を予定していてくだ
さい。
日本チャーリー・パーカー協会
会長 辻 真須彦(辻バード)
Bird-50!「チャーリー・パーカー没後50周年記念の夕べ」
よういちさん!!みなさん!!!
さきほどボクのサイトに、やっと"Bird-50!"
「チャーリー・パーカー没後50周年記念の夕べ」
の概要を発表しました。ぜひ覗いてみてください。
↓
http://tsujib.com/050107Bird-50.htm
これからも、色々とお手伝いをおねがいしたい です。なにしろ、この壮大なイベントを、人手も ない、金もない、そんな状態で準備しています。
それも、パーカー没後50年というのに、日本で は、何の動きもありません。どなたか、他にこの ような企画がある時には、ぜひお知らせください。
あっ、5月には、湘南で宇山さんたちが凄い企画
を立てています。これにもぜひ協力して行きましょ
う。では、よろしくおねがいします。
辻バード
パーカー没後50年イベント「Bird 50!」閉幕
たったいまBird 50!から帰ってきました。
いや〜濃厚な一夜でした。すばらしかった。
まだ頭の中でアルトサックスの音が鳴り響いています。
天国のパーカーにも届いたかな?
詳細は近々にレポートします。
Bird 50!を支えたスタッフの皆さん、お疲れ様でした。
ありがとうございました!
05/03/17(木)19:29:29 辻バード
Bird 50!
みなさん!!!
Bird50!のこと、メールやBBSへの感想をたくさん頂いています。
ありがとうございました。残念なことにボクは今、みなさまそれ
ぞれにご返事が書けない状態です。それは自宅の引っ越し準備に
突入しているからです。ゴメンなさい。
さて、さきほどボクのサイトに、Bird50!の様子を伝える動画を
一つ掲載しました。これは当夜のハイライト、澤田一範さん指揮・
編曲・演奏のwith Stringsの断片的な抜粋です。素晴らしい演奏だっ
たことが、強く伝わってくる映像だと思います。
ぜひ、ボクのサイト、http://tsujib.com をご覧ください。
そして、Bird50!当夜の感激を蘇らせてください。
では、またこの動画をご覧になって、ボクのBBSへでも感想を
書いて頂けると、とても嬉しいのです。
辻バード Bird 50! 「チャーリー・パーカー没後50周年記念の夕べ」のレポート
第一部 2005年3月13日(日)新橋「SOMEDAY」にて行われた、チャーリー・パーカー没後50年イベント「Bird 50!」のライブ・レポートです。
内容盛りだくさんのイベントでいろいろありすぎて、駆け足のご案内になってしまうのがもったいないのですが、出来る限りをお伝えい
たしましょう! 5年前のイベント、Bird 2000でもそうでしたが、この日も超満員。会場のSOMEDAYは大久保から新橋に移転して広くなったものの、そ
の許容数を上回る人の入りです。老若男女、様々な層の方々が入っているのがうかがえます。宣伝のチラシ配りを手伝ったワタシも感無
量です。 18:00 Bird 50! 開催 〜 エスクワイヤキャッツ・スーパーサックス の演奏 18:20 トークセッション その1
大和氏がパーカーの魅力について語ります。大和氏は個人的には今日一番お会いしたかった方です。実は名前の印象から少しコワモテの
イメージが私にはあったのですが、とんでもない。非常におだやかな方でした。ただ、パーカーの圧倒的なアドリブのなかにある歌心に
ついて大和氏が語るとき、柔和な語り口のなかにもパーカーに対する愛情と情熱がひしひしと迫力を持って伝わってきます。
岡村氏がパーカーVerve全集の監修当時の裏話を語ります。全集のおまけをつけるため、当時未発表だった1952年3月25日ライブの
「Ornithorogy」の演奏を、ライブ主催のジェリー・ジェローム氏からなんと6千ドルで吹っ掛けられながらも購入したが、すぐに同音源
がイタリアのレーベルからポリドールへと放出されて市販されてしまい、ガックリきたとのこと。このようにパーカーの音源をめぐって
泣き笑いした人が昔からいっぱいいたのでしょうね。
そして三浦氏が本日の目玉のひとつ、未発表音源を会場に流してくれました。1945年12月17日ビリーバーグスクラブでのライブ演奏
「How High the Moon」、スリム・ゲイラードをリーダーとした、ガレスピーとの双頭バンドです。ノイズは入っているものの観客のざわ
めきが、少し小さめのクラブの雰囲気を感じさせます。
19:10 宮武達郎カルテット with 増田ひろみ
19:40 トークセッション その2
瀬川氏はパーカーのライブを生で体験した話、そして1948年(昭和23年)3月に馬渡誠一CBナインというバップバンドがコンサートをし
た時の話をしてくれました。1948年当時からビ・バップを演奏していた日本人バンドがあるという事実に驚きです。当時はアメリカでも
まだビ・バップは一般的ではなかったイメージがありますよね。
岩浪氏がパーカーにまつわるよもやま話で会場を笑わせます。1953年のJATPではパーカーが来日予定でパンフレットにも掲載されていた
のに、麻薬常習者パーカーの入国規制を恐れたせいか結局こなかったとのこと。パーカーが来日していたら日本のジャズが変わっていた
かもしれませんね。
石原氏はソニー・スティットとアート・ペッパーの共演アルバム録音プロデュース時に、両名からパーカーについて聞いた時のことを語
ります。
佐藤氏はパーカーの魅力について、どんな悪い音質の中でも大きな存在感を感じることを取り上げています。キース・ジャレットがパー
カーのプライベート音源のような音質の録音を残したとして、そこからキースの良さを実感できるか?と言われると確かに疑問ですね。
そして藤岡氏が2005年2月20日にニューヨークで開催されたGuernsey’s社主催のジャズ・アイテムのオークションの報告を聞かせてくれ
ました。約400点出品された大規模オークションですが、みな入札価格が高すぎて藤岡さんはずっと指を咥えて見ていたそうです。でも
それらアイテムの実物を見られただけでもうらやましいですよね。
20:30 休憩にて 第二部
20:40 沢田一範ウィズ・ストリングス
21:30 著名アルトサックス奏者による演奏
次は、高校を卒業したばかりの18歳、矢野沙織さんです。オレンジ地に黒のまだら混じりのシャツ、頭に大きなターバンを巻いて、ミン
トグリーンの腕輪をつけたファッショナブルな出で立ちで「Barbados」「Moose the Mooche」を演奏します。渇いた若者特有の鋭い眼
光で、真剣に堂々と直立して吹きあげるその佇まいが頼もしい。力強く鳴らされるアルトの音色からは、単なるパーカーフォロアーを超
える、自身のこれからのサウンドを期待させます。
そして、熊本泰浩氏がコンガ奏者のぽっぽ渋谷氏を従えてラテンナンバーを演奏します。ポコポコとコンガが心地よく響くなか、熊本氏
は「Estrellita」を南国の海岸にそよ吹く風のようなアルトで歌い上げ、今までの熱演で会場を立ち込めていた熱気をやさしく払ってく
れました。ところが「Tico Tico」では一転、疾風のような吹きっぷり。リズムセクションの演奏が地熱のようにじわじわと熱くなり、コ
ンガの音も地の底から沸き立つように激しく響きます。聴いているこちらも気分が高揚してきます。
最後に大山氏、矢野さん、熊本氏に、沢田氏と増田さんを加えたアルトサックス奏者5名による「Confirmation」。さまざまな個性をもっ
たアルトサックスの達人達が、心を一つに、パーカーに捧げものをするかのように吹きまくる様子は感動的です。
22:30 ジャム・セッション
23:00 「Bird 50!」 終了
「Bird 50!」のスタッフの皆さん、演奏者・講演者の皆さん、素晴らしいイベントをありがとうございました。今度はお客として来た
我々一人一人が、パーカーを後世に伝えていけたら素敵なことですね! よういち
↓
http://tsuji.ubiq.reset.jp/050317BD50Strings.htm
Charlie Parker Fans "Chasin' the Bird"(管理者:よういちさん)のサイトに掲載された、
Bird 50! 「チャーリー・パーカー没後50周年記念の夕べ」、よういちさんご自身のレポートをよういちさんの許可をいただき掲載さ
せていただきます。
会場のざわつくなか、「Parker's Mood」のイントロがサックス3本でファンファーレのように響き渡りました。Bird 50!の開催です。
日本チャーリー・パーカー協会辻会長からのあいさつがあります。パーカーこそ20世紀の音楽として後世に引き継がれるべき数少ない音
楽家のひとりであるとのこと。
そう、そのとおりですね。けれどもそのためには皆がパーカーを評価して、伝えていかなければならない。そのためにボランティアで開
催されたイベントがこの「Bird 50!」なのですね。
演奏が続きます。バンドはエスクワイヤキャッツ・スーパーサックス、慶応大学OBの方々中心に結成されたバンドです。テナー、アルト、
バリトンのサックスをフロントに立てて、あのパーカーのアドリブソロをユニゾンで演奏した本家スーパーサックスばりの演奏を聴かせて
くれます。ミュージシャン平均70歳のこのバンド、心地よくマイルドに3管が響いてくるのはやはり年輪を重ねたせいなのか。
ステージの壁からはがれ落ちた「Bird 50!」の張り紙をアルトサックスの方が演奏中に悠然と張りなおしましたよ。さすが余裕を感じさ
せますね。
ジャズの著名評論家たちがパーカーについて語り、思い入れのある音源を会場に流す、トークセッションです。ジャズ喫茶「いーぐる」の
マスター後藤雅洋氏、パーカー研究家大和明氏、Verve全集を監修した岡村融氏、パーカーコレクター三浦和三郎氏が熱く語ります。
後藤氏の語るテーマは「タイムマシンで過去に連れて行ってくれるとしたらどこに行きたい?」。
会場にいるパーカーフリークの答えは決まっていますね?。当然パーカーのライブ会場でしょう!後藤氏が選んだ行き先は1952年9月26日
ロックランドパレスでのライブ。パーカーを生で体験できないくやしさを一番感じさせる演奏とのこと。
「Lestrer Leaps in」が会場に流れます。たしかにこれを生で味わったら人生ガラっと変わるんだろうな〜(CD・レコードで聴いただけ
で、ワタシは少し人生踏み外してますけど)。
満を持して出てきたパーカーの一吹きは、クラブの規模やバックの演奏とアンマッチな大きな音塊。もう圧倒的です!1945年も年の瀬に
もなるとパーカーの音楽はすっかり完成していて、当時からライブで大暴れしていたことがわかります。スゲ〜。
この音源、私知りませんでした。三浦さんからはこの後で他の未発表音源の存在も教えてもらいました。勉強不足を痛感しましたが、同
時に聴いたことのない音源がまだまだあることがうれしくもありました。
トークセッションの合間にライブ演奏が入ります。宮武・増田両氏の双頭アルトのバンドです。「フィル・アンド・クィル」みたい、と
いう声が会場からもれ聞こえます。太い音で熱気のこもる宮武氏、熱を内に秘めてクールに迫る増田さん、好対照です。演奏が進むにつ
れ、両者とも音が力強くなってきて会場も盛り上がってきましたよ。
引き続きのトークセッションとして、日本人では希少なパーカーのライブを生で体験した瀬川昌久氏、日本ホットクラブ会長の石原康行
氏、ジャズ評論家岩浪洋三氏、佐藤秀樹氏、コルトレーン研究家藤岡靖洋氏が次々と語ってくれました。
私が関心を惹いたのは石原氏がスティットから聞いたことばです。
「パーカーは偉大なミュージシャンだ、自分はパーカーにあこがれてアルトを吹いた。」
スティットはパーカーが世に出る以前からパーカーに似た演奏をしていた、という説を聞くことがありますが、スティットにとってもパ
ーカーはアイドルでその演奏スタイルを追っていたのですね。貴重な証言だと思います。
パーカーのキング製アルトサックスはどうやらカンザスシティのジャズミュージアムが落札したそうなので、展示品として一般人の見学
できる機会ができることでしょう。よかった、よかった。
休憩時間に同じテーブルにいらっしゃった瀬川氏に、昔から直接お聞きしたかったことを、ずうずうしくもこの機会に聞いてみました。
それは、「パーカーの生のライブ演奏のサウンドに近いレコードはあるのかどうか」。
瀬川氏の答えは「ないですねぇ」。パーカーの音はビッグバンドにまったく押されない対等な音で、会場の奥まで届いて響き渡る。これ
を表現している音源はちょっと見当たらないとのことでした。貴重なお答えありがとうございました!。
パーカーの生のライブ演奏はスゴイんだろうなぁと、ボケ〜と空想しているうちに、弦楽器を持った演奏者の方々が次々とステージに集
まってきました。本日のメイン、沢田一範 ウィズ・ストリングスがいよいよ始まります。
top
ステージ左側にアルトサックスの沢田一範氏とピアノ・ベース・ドラムスのリズムセクション、ステージ右側には管弦楽器奏者がずらりと
ならびました。バイオリン3名、ヴィオラ1名、チェロ1名、オーボエ1名。沢田氏が出だしの指揮で腕を振り上げると会場がにわかに静
まり返ります。そして「Just Friends」のオープニングのストリングスが響き渡り、沢田氏がパーカーのイントロそのままに吹き上げま
す。
沢田氏は長髪にひげを蓄え求道者然とした風貌。そのイメージもあるせいか、アルトから広がる音は太く豊かでありながらも、無心にパ
ーカーに仕えているかのように澄んで聴こえてきます。リズムセクションも影ながら実に締まった演奏です。
「April in Paris」、「East of the Sun」、「Easy to Love」・・・、耳になじみの「パーカー・ウィズ・ストリングス」のレパート
リーが、周囲の空気を一変する音の広がり方で奏でられます。ストリングスやオーボエを加えたフォーマットの生演奏を聴くのは私は初
めてなのですが、躍動的なアルトと溶け合いながら、想像以上の豊潤さで会場中に響き渡りました。ジャズクラブでめったに耳にできな
いサウンドではないでしょうか。体内の未開拓の領域に音が踏み込んでくるような感覚に私はとらわれました。CDやレコードで「ウィズ
・ストリングス」を楽しんでいるときには体験できなかった感覚です。
最後は、ストリングス奏でるシェーンベルグの「浄夜」の演奏を受けて、ストリングス付きの「Parker's Mood」。上質なドレスを裸体に
まとうことで、かえって肉体のラインが美しく引き立つような、そんな凄艶さを感じます。
演奏に心奪われながらも、私は少し考え込んでしまいました。
こうしたストリングス編成を切望していたパーカーにとって、当時どんな音楽が彼の頭の中では響いていたのだろう。このサウンドがま
さしく彼の本当に望んでいたサウンドなのか、それとももっと違う音が頭の中では鳴っていたのか?
少なくとも1940年代末期以降は、黒人アンダーグラウンド音楽ビ・バップの範疇を超えたサウンドがパーカーの頭の中では鳴り響いてい
たのではないか、彼の思いはジャムセッションの繰り広げられるヤニくさいジャズクラブ界隈を超えていた、ということは言えそうな気
がします。生きている間にそれを充分に表現しつくすことは出来なかったかもしれませんが。
それにしてもホントめちゃめちゃ贅沢なサウンドです。演奏者を揃えるだけでも大変でしょうに、日本チャーリー・パーカー協会は、な
けなしのカンパを追加投資して、当日リハーサルのために近くのスタジオを借りたと聞きます。こうした入念な準備のもとに成り立って
いるサウンドなのですね。パーカーが頻繁にストリングス付きのライブを続けていたなんて信じられませんね。
沢田一範 ウィズ・ストリングスの演奏が終わり、「Bird 50!」に賛同いただいた著名なプロ・アルトサックス奏者が次々と演奏を繰り広
げました。
最初は、パーカーに大きく尊敬を寄せる大山日出男氏、「Anthropology」を超高速で吹きまくる!ものすごいスピード感で、会場中が艶
のある朗々としたアルトの音で埋め尽くされましたよ。瞬間的にキーをずらしたフレーズを吹いたり、オクラホマ・ミキサー等の様々な
引用フレーズを取り入れたりと、パーカーの十八番のワザを惜しげも無く盛り込んで、大きな歓声を沸かせます。そして一転、バラッド
の「Embraceable You」では艶のある音色を引き立たせてじっくりと聴かせてくれました。
熊本氏はラテン風の演奏を上回るパーカーっぷり、大山氏が吹きまくり観客をのせる、のせる!そんな演奏をステージ上の矢野さんは横
目で、何でも吸収しようという面持ちで見つめています。そんな姿が印象的でした。
プロのアルト奏者の演奏を引き継いで、最後はアマチュア・ミュージシャンによるジャムセッションです。バードの殉教者たち、バード
の子供たち、これから翼を広げて羽ばたこうとする者が集まり、自分の力をめいっぱい披露します。最後は「Now's the Time」の大合唱
で「Bird 50!」は幕を閉じました。
5時間どっぷりパーカー漬けでおなかいっぱい、胸いっぱい。彼の魅力を大人数で分かち合えた非常に貴重な、非常に濃い一夜でありまし
た。
辻会長がいみじくも「今夜の演奏はパーカーのフルコース」とおっしゃっていましたが、ウィズ・ストリングス、ストレートなビ・バッ
プ、そしてラテン風と、本当にカラフルな音楽で楽しませてくれました。そのカラフルさがパーカーの足跡を辿っての帰結だというこ
とが少々意外に思われるかもしれません。パーカーと言えばビ・バップを極限まで完成させ、モダン・ジャズの語法を確立した、ビ・
バップの頂点の人物という固定されたイメージがあります。
しかし実際は、本人が切望したものも意に染まないものもあったでしょうが、ビ・バップの範疇を超えたフォーマットでの演奏も数多く、
また、自らが完成させたビ・バップの気持ち良さの範疇とは別の感覚も、1950年代に入ってからのパーカーは生み出しつつあったように
私は思います。その片鱗をこの夜会場に居た人は味わうことができたのではないでしょうか。
絶頂期を通り越してしまったといわれる1950年代のパーカーの演奏をよくよく聴き返してみると、通常のカルテット、クインテット編成
の演奏であっても、1940年代の演奏にはなかった新しい感覚をほのかに感じることがあります。それはカンサス・シティーを飛び出した
パーカーがニューヨークで過ごすなかで芽生え始めたものだとおもうのですが、存命中に結実したとは言いがたいです。沢田一範ウィズ
・ストリングスに感動しながらも、同時にそんなパーカーの無念さを想像してしまい、私はちょっぴり胸が痛みました。
パーカーの評価は充分にされているとは私には思えません。ビ・バップの大将、ジャズの語法の創出者、そのような範疇とは別のところ
でまだまだ語るべきものがあるような気がします。今の私にそれをうまく説明することは、まだ残念ながらできないのですが。この
「Bird 50!」に参加して、パーカーをもっと聴いてやろう、彼の伝えたかった感覚をもっと探り出そう、と意気込みを新たにしました。
Masuhiko Tsuji (TSUJI-Bird)
1932年10月23日 神戸生まれ
慶應義塾大学在学中の1952年から1965年まで、ジャズ・アルトサックス奏者。
1986年「旅先通信」を提唱し、以来世界のどこでも、いつでもパソコンを持ち歩き通信を行う
日本チャーリー・パーカー協会会長
カンザス・シティー名誉市民
2000年11月25日(土)「SOMEDAY」にて-- パーカー生誕80年記念イベント--Bird 2000 開催。
2005年 3月13日(日)「SOMEDAY」にて〜チャーリー・パーカー没後50年の夕べ--Bird 50! 開催。
2007年 3月30日食道ガンにて死亡。享年74歳。
ここで紹介する文は、ニフティのパソコン通信によって、旅先からパティオ(PATIO)へ書き込みしたものです。 辻バードさんが、1994年9月にロンドンで開催された、オークション参加からカンザス・シティへ寄贈した経緯、等を 中心に、書き込み文を紹介します。
Bird 50! チラシとチケット
澤田一範ウイズ・ストリングスの演奏です。
ゲスト・セッションの映像です。
“Bird 50”後記
大和 明 ジャズ評論家
巨星チャーリー・パーカーの没後50周年を追悼して、日本チャーリー・パーカー協会が主催するイベントが新橋のジャズ・クラブ
“Someday”において3月13日の午後6時から11時まで5時間にわたって超満員のパーカー・フリークを集めて行われた。
同協会会長辻真須彦氏の慶応大学在学時代の同僚や先輩方たちの70歳を超えるサックス・アンサンブル(as,ts,bs+リズム)による開
幕ファンファーレ[Parker's Mood]で会は始まった。会長の挨拶を挟んでこのエスクァイヤ・キャッツによるスーパーサックス風の演奏
で会場の雰囲気は早くもパーカー一色に染まり始める。ここで後藤雅洋、筆者、岡村融、三浦和三郎という、岡村氏はともかくとしてい
ずれ劣らぬバード狂いによるパーカーに寄せる思いをぶちまけた1人あたり持ち時間8分のトーク・セッション前半に移り、その話に関係
するバードの録音が場内に流された。
ここで宮武辰郎カルテット+増田ひろみによる演奏となり、宮武のパーカー増田のコニッツ風アルトを想定した2アルトでトーク・セ
ッションの疲れを癒す効果が得られたのは良かった。どちらかというとフィル・ウッズ&ジーン・クイル的な演奏を楽しめた。
ここでトーク・セッションの後半に移り、瀬川昌久、岩浪洋三、石原康行、佐藤秀樹氏がパーカーに関係にした逸話などを披露し、
その最後に特別参加で大阪から駆けつけたコルトレーン・フリークの藤岡靖洋氏により2月20日にニューヨークで行われたジャズお宝オ
ークションでパーカーのアルトが約2500万円でカンサス・シティのパーカー記念館に落札されたとの模様が報告された。時間が押してい
るので短い休憩時間の後第2部が澤田一範with Stringsで開始された。"Just Friends""Repetition"ら4曲は、目を瞑って聴くならばあた
かもそこにバード&ストリングスが甦ったような想いに一瞬惑わされたかのようなパーカーの精神が宿った見事な演奏であった。
またパーカーのウイズ・ストリングスの録音はないが、澤田の編曲で新たに作られたストリングス入りの"Parker's Mood"もこの会に
ぴったりの試みであり、そのための努力は演奏の見事なことと共に賞賛される。その後リズム・セクションとのカルテットで"Quasimodo"
が演奏され、この日のハイライトとなったセットが終了した。
続いては大山日出男、矢野沙織、熊本泰浩、澤田一範という4人のアルト奏者による2曲ずつの競演で、大山は"Anthropology"を淀みな
いスピード感に乗ってソニー・クリス的な興奮性を示した。矢野沙織は弱冠18歳の女性とは思えぬしっかりした音色とスピード感を持っ
ており、これからがますます楽しみだ。ダブル・テンポの後に繰り出すフレーズがやや気を抜いた同じパターンの繰り返しになる点が気
になるのが今後の課題だろう。熊本泰浩はコンガを伴ったクインテットによりラテン・ナンバー2曲を歌心のあるプレイで好演した。これ
でパーカーのレパートリーが出揃ったと言える。澤田も伸び伸びと力量を示した。またピアノの井上裕一のプレイがソロ、バッキング共
に好演だったことも見過ごせない。そして最後に増田も加わった5アルトの豪華な共演によるジャム・セッションで"Confirmation"を演奏
し、このセットを終えたのである。
その後1時間の予定が組まれていたアマチュア歓迎の飛び入りジャム・セッションは時間の都合で15分ほどに短縮されたのは気の毒で
あったが、参加された皆さんの熱演の中、時間通りに会は大成功で終了したのであった。
YOKOHAMA JAZZ ASSOCIATION 『横浜JAZZ協会会報』「HAMA JAZZ」 2005 4月号
Bird 50トークセッションにも参加していただいた、大和 明氏は2008年9月8日、72歳にて死去されました。