BIRD'S LEGACY by TORIYA

   ダイアル・レコードは、しばらく活動を休止した後、1954年に閉鎖する。ラッセルはジャズ部門を1954年６ 月、クラシックの通信販売のレコード会社、コンサート・ホール・ソサェティに売却する。そして55年３月12日ダイアルのリー ダー・アーチスト、チャーリー・パーカーがニューヨークで死亡する。
   コンサート・ホール・レーベルからは10インチ、12インチ盤が発売され、さらに同社のジャズ部門、ジャズトーン・レーベルからも 10インチや 12インチ盤 が発売されている。しかし、この後ダイアル原盤は、色々な会社に散逸してしまい、特にパーカーのレコードは、バロネット、 ルースト、チャーリー・パーカー・レコード、英アレグロ、英サガ等々、極めて複雑な内容で市場に出てきたものである。 それでも、ダイアルが廃盤で入手困難になっていたため貴重なものであった。1970年イギリスの著名なコレクター、トニー・ ウイリアムスが興したレーベル「スポットライト・レコード」が、ダイアル・レコードのほぼ全容が掴めるシリーズを発売す る。「パーカー ・オン・ダイアル」６枚の他、ダイアル・マスター・シリーズ７枚（最後のリスト参照）、そしてダイアル・レーベル以外 でもパーカーの貴重盤を世に送り出した素晴らしいレーベルである。スポットライトのライセンスを受け、LPでは、アメリカ からワーナー・ブラ ザースの６枚ボックス・セット、日本・東芝EMIからもボックス・セットが発売された。ＣＤ時代になって、スポットライトの他ア メリカ・スタッシュ・レコードや日本の東芝EMI・レコードから色々な形でリリースされ、日本・東芝EMI・レコードからはコ ンプリート・ダイアル・レコーディングスが発売されている。2003年10月同社から世界初24ビット・デジタル・リマスタリン グによるパーカ ー・オン・ダイアル完全盤が、10インチ盤ジャケットによる紙ダブル・ジャケットで４枚組で発売された。
   ロス・ラッセルは、55年マサチューセッツでゴルフ場の経営にのりだし、数年後にはゴルフ場を購入するが、59 年にはカリフォルニアに戻り、 ジャズ小説「ザ・サウンド」を書き上げ、60年に出版される。スポットライト・レコードがダイアルをリイッシューするこ とに手を貸したラッセルは、71年カリフォルニア大学出版部から 「ジャズスタイル・イン・カンザスシティ・アンド・サウスウエスト」を出版する。引き続いて73年には、 「バードは生きている-チャーリー・パーカーの栄光と苦難（BIRD LIVES!）」（Charterhouse）を出版する。
   ロス・ラッセル・コレクションのうち、ダイアル・レコード関連資料はテキサス大学オースチン校、ハリー・ラ ンソム・ヒューマニティ・リサーチ・センターに保管されている。92年４月同センターが共催の"Bird Lives: The Enduring Influence of Charlie Parker"と題された、展示会とシンポジュームが開催され、著名なパーカー研究家、評論家が参加した。 ラッセルは参加されなかったが、それらの準備の全体にわたる学芸員および主催者と文通している。80年代には一時、南アフリ カに住んでいたが、このシンポジュームの数年前にはアメリカに戻り、サンディエゴの近くに移転している。94年9月8日にイギ リス・サウスケンジントンで開催されたクリスティーズの「バード/チャン・パーカー・コレクション」 オークション会場に顔を見せているが、日本チャーリー・パーカー協会会長・辻真須彦、吉野隆一、小田弘一の三氏が歓談 している。
   2000年１月31日入院中のカリフォルニア州パームスプリングの病院で他界、享年91才であった。

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